PROJECT REPORT 02

行政サービスを支えるITインフラを再構築 by ダイワボウ情報システム株式会社

ディストリビューターの枠を超え、
エンドユーザーの課題解決を
自らデザインしていく存在へ

国内トップクラスのIT専門商社であるダイワボウ情報システム(DIS)。
そんなDISが今回挑んだのは、従来とは異なる体制で販売パートナーを支援し、
自治体の行政サービスを支えるITインフラを再構築するプロジェクトだ。

ミッションは、自治体の仮想化基盤とネットワークの刷新
販売パートナーのブレーンとなって、難題に立ち向かう

舞台となったのは、ある地方自治体のS市。ダイワボウグループでITインフラ流通事業を担うDISは、公共分野でも豊富な実績を誇っている。官公庁や自治体に向けて、販売パートナーを通してITインフラ構築のためのさまざまな製品を納入しており、国内最大級のITディストリビューターとして確固たる地位を築き上げている。しかし、今回DISに求められたのは、従来のビジネス領域の枠を超えたチャレンジであった。
プロジェクトが立ち上がったのは、販売パートナーである大手SIerから「S市役所がITインフラのリプレースを計画しているので支援してほしい」と依頼されたことがきっかけだった。通常であれば、SIerが自治体からの要望に基づいてシステムの仕様を考え、必要なIT関連製品の手配をDISに依頼。DISは、取引のある数多くのメーカーの中から最もふさわしい機器を選定してSIerに提案し、それをもとに入札が行われ、契約を獲得すれば製品を納入するという流れだ。しかし、S市役所が抱えていた問題は根深く、販売パートナーのSIerも解決に向けてどうアプローチしていくか、考えあぐねていた状況だった。そこで、ITインフラ構築に関して豊富な知見を持つDISに、仕様をデザインするところから知恵を貸してほしいというオファーが寄せられたのだ。
S市役所からの要求は、ITインフラを構成する仮想化基盤(※1)とネットワークの刷新であった。既存のインフラは、複数のベンダーによってさまざまな製品が導入されて異様な構成となっており、市役所のIT担当者も全容を理解しきれておらず、トラブルが起こった際に原因の究明と復旧が困難な状況だった。そこで、このインフラを再構築して管理しやすい環境にするとともに、冗長化(※2)によって万が一の災害時にも機能し続けられる仕組みにしたいとのオーダー。この難題に対して、DISは販売パートナーとともに立ち向かうことになった。

(※1) サーバなどの物理的なハードウェアの中に、ソフトウェアによって複数の仮想的なシステムを作り出して運用する仕組みのこと。

(※2) システムに障害が発生した場合に備えて、全体の機能を維持し続けられるように予備システムを平常時から構築・運用しておくこと。

POINT

契約獲得に向けて販売パートナーであるSIerと高次元で協業

製品の販売だけではなく、インフラ基盤のデザインから関わる

前例のない取り組みでも、価値があると判断すれば実行
総力を結集し、自社の強みを存分に活かして契約を獲得

この案件をリードしたのは、当時30代の営業担当者。DISでは、営業担当者に大きな裁量が委ねられ、案件の獲得に向けて自由に采配を振るうことができる。販売パートナーのSIerからの相談を受けて、彼はDISのグループ会社である“ディーアイエスサービス&ソリューション”に協力を要請。ディーアイエスサービス&ソリューションは、システムを設計開発できるSEを擁しており、彼らを動員して仮想化基盤とネットワークの構想に取り組んだ。
IT製品を供給するだけではなく、その前段階のITインフラのデザインまで関わるのは、ディストリビューターであるDISにとって過去にあまり例のない取り組みであった。しかし、その営業担当者は敢えて「この案件を成し遂げて実績をつくれば、DISがバリューチェーン(※3)において提供できる価値がもっと大きくなる」と考え、プロジェクトを推進。販売パートナーのSIerにも積極的に働きかけ、エンドユーザーである市役所サイドの情報を綿密に収集し、ニーズに応えるインフラ基盤を関係者とともに考案していった。
そして、デザインしたインフラを実現するためにはどんな製品で構成すべきか、海外のメーカーも含めてリサーチ。DISはマルチベンダーとして、世界中の約1,400社のメーカーの商品を取り扱っており、最適な製品を組み合わせて提案できるのが大きな強みだ。プロジェクトチームの面々は候補となるメーカーの製品を次々と検証し、ベストな構成を突き詰めていった。
こうした努力の甲斐あって、販売パートナーであるSIerとともに実施した提案は、S市役所から評価されて見事に契約を獲得。さらに、この仮想化基盤とネットワークのリプレースの実績が認められ、S市の教育委員会のITインフラの構築提案も打診され、同様に大きな受注に結びついた。
この一連の案件は、DISの総合力を発揮すれば、さらに新たなビジネスを創出できることを社内外に示す結果となった。こうした取り組みを重ねていくことで、販売パートナーの信頼も高まり、これからますます市場が拡大するDX(デジタルトランスフォーメーション)領域においても、従来の枠を超えた提案で新規案件を獲得できる可能性が広がっている。公共分野でも自治体のガバメントクラウド(※4)対応など、課題解決に貢献できるテーマは山積しており、DISとしても今後このような課題解決にも貢献できるよう、メーカー、販売パートナーと協業し、社会における存在意義をいっそう高めていく決意だ。

(※3) メーカー、販売パートナー、エンドユーザーをつなぐことで、それぞれに利益をもたらしていくこと。

(※4) 主に地方自治体へ向けて、共通的な基盤・機能を提供して効率的なシステム構築を可能にすることを目的に、政府が運用するクラウドサービス利用環境。

POINT

営業担当者の采配でDISの総合力を発揮し、高度なニーズに対応

この成功事例を社内外に展開し、新たなビジネスの創出を目指す